研究グループ
細胞移植・心筋再生グループ
概要
当グループでは、ドナー不足に悩む臓器移植(心臓移植)にかわる治療法としての細胞移植治療の確立に向けた心臓再生研究に取り組んでいます。近年では特に、多能性幹細胞(ES / iPS細胞)を用いた研究を積極的に進めています。また、新たな生体材料を用いたドラッグ・デリバリー・システム(DDS)やティッシュエンジニアリング等も視野に入れ、再生医療における幅広い領域の研究を、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、同再生医科学研究所、東京女子医科大学など数多くの施設との連携のうえ行っています。
研究内容
- 1. 多能性幹細胞(ES / iPS細胞)を用いた心臓再生(京都大学CiRAおよび東京女子医科大学との共同研究)
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マウスES細胞から直接心筋細胞や内皮細胞など心臓を構成する細胞へ効率よく分化誘導する技術(京都大学CiRA 山下潤教授)および細胞シート技術(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 岡野光夫教授・清水達也教授)を用いて、ラット心筋梗塞モデルに対する心臓組織シート移植による心機能改善効果を示しました1。更に臨床応用を見据えてヒトiPS細胞を用いた実験を展開させているところです。
また、これらの分化系を用いて心臓血管の発生分化のメカニズムを細胞レベル、分子レベルで検討し、その知見を心臓再生医療に応用するための研究を進めています。
(図1)マウスES細胞から分化誘導した心筋細胞(cTnT陽性)(左・中)4およびマウスES細胞から分化誘導した血管内皮細胞(CD31陽性)および血管壁細胞(aSMA陽性)(右)1。
(図2)マウスES細胞から作製した積層化心臓細胞シートおよびラット心筋梗塞モデルへの移植1。
(図3)細胞シート移植による血管新生誘導効果。vWF陽性新生血管内皮細胞が、移植されたマウス細胞周囲に著明に集積している(左)。移植後4週後には、移植群(Tx)において著明な新生血管密度上昇が認められた(右)1。
- 2. 新開発の植物由来生体糊”LYDEX”の研究(京都大学再生医科学研究所との共同研究)
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従来の血液製剤由来の製品がもつ感染症の危険性がない植物由来の生体糊”LYDEX”を用いた実験(止血・癒着防止・感染予防)を、中・大動物を用いて行っています。
(図4)ウサギを用いた再手術時癒着防止実験。LYDEX群では手術1ヶ月後の心臓周囲の癒着が有意に少ない。
- 3.その他進行中のプロジェクト
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・低分子化合物・サイトカインを用いた心臓再生に関する検討
・心筋梗塞における病態メカニズムおよびリモデリング抑制に関する検討
・生体材料(ゼラチンハイドロゲル等)を用いた心臓再生に関する検討
・スタチン・ポリフェノール等の心筋虚血に対する保護効果の検討
共同研究機関
受賞一覧
- 升本英利 第9回宮崎サイエンスキャンプ 優秀賞(2013年2月)
- 升本英利 第33回日本炎症・再生医学会 最優秀ポスター賞(2012年7月)
- 升本英利 第4回日本再生医療学会 YIA(若手奨励賞)最優秀賞(基礎研究部門)(2012年6月)
- 升本英利 第32回日本炎症・再生医学会 ポスター賞(2011年6月)

